対話の話題になったときに、「どうやっていいかわからない」とよく耳にします。
聴き方、尋ね方、引き出し方がわからないといった悩みです。
この悩み、童話『北風と太陽』のようだなと感じています。
旅人の上着を脱がせようと勝負する北風と太陽の話で、
旅人は力技で進めようとする北風には抵抗して上着を離しませんが、
温かい太陽のもとでは自然と上着を脱ぎます。
強制すると反発があるけれど、自主性を尊重して促すとうまくいくということですね。
対話がうまくいかないと感じている理由の1つは、
聴き手が北風のような状態になっていることだと思います。
話をさせよう、情報を引き出そうとする聴き手のスタンスです。
話してもらおう、情報を取ろう、と聴き手が北風のようになって、
相手が話したいと思っていないのに、話をさせようとしているんです。
例えば上司と部下の1on1の場面でも、
上司の「話してもらわないと困る」という様子が見え隠れしたり、
結論を急がれたりすると部下は話したくはなくなるでしょう。
前提にあるはずの信頼関係がないままに対話の場を設けても
「信頼できる人には話せるけど」
「ここで話したことがどこにどのような形で知られるかわからない」
など、話し手が不安を感じていると話し出そうとはしません。
聴き方、尋ね方、引き出し方という
ノウハウとかの前の段階で
相手に対して関心を持って接しているか、寄り添えているか。
対話がうまくいっている人は、
普段から相手に対して「何に困ってるんだろう」
「どうしたら相手がやりやすくなるんだろう」と
相手に対して関心を持って、寄り添っています。
聴き手としては、太陽のように相手の自主性を尊重して促す
「話して楽になれるんだったら話してほしいな」というスタンスです。
信頼関係が築けていているので、改まって場を設けなくとも話をしてもらえます。
対話の場も日常の延長になっているので、
相手から「話したい」「聴いてほしい」と話してくれるのだと思います。
スタッフイノウエ