スタッフのひとりごと:聴き方に比重を置いて

日常での会話であれば、話し手が主体で聴き手が対象に捉えられます。

対話の場では聴き手がどのような姿勢で聴くかによって、
話し手から出てくる内容が変わってくるため、聴き方はとても大切だと思います。


話し手が話す内容に対して、聴き手が「そうそう!私もね」と自分の話をはじめてしまい、
話の軸が相手に移っていくことは日常の中でよくありますよね。

でも、そうやって話の軸が相手に移っていくと、
話し手であった人は自分が主体になって話そうとしなくなります。

それに話していて、「あなたの考え方は〇〇ですよね!」と決めつけられることは、
誰でもいい気持ちがしませんよね。

そして「そうではないのだけれど…」と伝えられないことが続くと、
聴き手に対して安心感や信頼感がもてなくなってしまいます。


相手の話を受けて反射的に返す言葉のキャッチボールでは、
話し手が表面的なことだけを受け取られてしまうと感じて、
曖昧な状態のものを出すことに不安になり、話し続けることに戸惑うこともあります。

「そういう受け止め方をされるなら、この人に話すのはここまでにしよう」
「あまり話すとかえって捻じ曲げた受け止め方をされるかもしれない」
というような心理が話し手に働いてしまい、深いところまで話ができなくなってしまうのです。

こうなってくると、対話とは呼べなくなります。

 

聴き手が受け止めたことを「いまの話を聴いて、私はこう思うのですが…」と返すこと。
話し手の想いや考え方の背景にあるもの、価値観などの大事にしているところを
確認しながら受け止めていくことで、話し手に安心感や信頼感が生まれるのです。

ときには話し手の言葉が少ないということもあるでしょう。
それは話し手が、どう話したらいいか迷っていたり、どういう表現で伝えたらいいかわからなかったり、
なかなか言葉として出てこないだけかもしれません。

そのようなときでも、聴き手が次の言葉を「ゆっくりでいいよ」と待って、向き合っていることが話し手に伝わると、
せっかく受け止めてもらえているから言葉に出してみよう聴いてもらえるかもしれない、と話し出してくれることがあります。

話し手が聴き手に対して、ちゃんと受け止めてくれていると感じる安心感や、
話しても大丈夫だと思える信頼感をもてることが、話の内容に影響するのです。


日常の会話では多くの場合、信頼されることの喜びよりも、
自分の言いたいことを言えたかということが気になってしまうかもしれません。

対話の場では、「聴く」と「話す」を意識してわけてみると、
言葉のキャッチボールだけのコミュニケーションでは気づかないものが見えてきたり、
感じたりするようになってきます。

話し手の話を受け止めて、しっかり聴いていくことで、話の表面的なものだけではなく、
相手の中にある想いや考え方の背景に気づけるようになってくるのです。

言葉に出してみても、話し手がしっくりこないということも、ひょっとしたらあるかもしれません。
その「しっくりこないんだけど…」という、話し手の中でも言葉にならないところまで伝えようとしてくれることは、
それだけ信頼して話してもらえているということなので、聴き手にとって幸せなことではないかと思います。

 

スタッフイノウエ