対話をしているとき、言葉を探して言い淀んだり、沈黙が生まれたりすることがあります。
そんなとき、どんな気持ちになるでしょうか?
「何か言わなくては」と焦るかもしれませんし、「気まずい」と感じることもあるのではないでしょうか。
沈黙は対話にとって悪いものではありません。
より深い対話につながる大切な時間でもあるのです。
対話の中で言い淀みや沈黙が生まれる理由、そしてそれをどのように受け止め、
活かしていけばよいのかを考えてみましょう。
【言い淀むのは、考えているから】
対話の中で、急に言葉に詰まることがあります。
相手が「ええと…」「うーん…」と考え込み、なかなか次の言葉が出てこないと、
お互いに「何か言わなきゃ」と思ってしまうかもしれませんね。
この「言い淀み」は、決してネガティブなものではありません。
何かをしっかり考えていて、言い淀んでいるのかもしれないからです。
例えばあなたが「このテーマについてどう思う?」と質問したとき、
相手がすぐに答えられないとしたら、それは適当に返事をせずに、
自分の考えを整理しようとしているのかもしれません。
デリケートな話題の場合には、慎重に言葉を選ぼうとしていることもあります。
そう考えると、言い淀みは「対話が深まるサイン」でもあるのです。
相手が言い淀んでいるようなら、考える時間を持てるように、急かさず静かに待ってみましょう。
【沈黙は「余白」――話の流れを整える時間】
沈黙が続くと、気まずく感じることはあるでしょう。
対話に慣れていないうちは、「何か話さなければ」と焦ってしまうこともあると思います。
ですが、沈黙は対話にとって重要な「余白」のようなものです。
本や絵を思い浮かべてみてください。
文字や色がぎっしり詰まっていると、読みにくかったり、
何が重要なのか分かりにくかったりしますよね。
同じように対話でも、ずっと言葉が続いていると、話の内容が流れてしまったり
整理が追いつかなかったりして、考える余裕がなくなることがあります。
沈黙が生まれたときは、「今、お互いに考えている時間なんだ」と思うようにすると、
焦る気持ちが少し楽になると思います。
【沈黙が生まれたときには】
それでも、沈黙が長く続くと「どうしたらいいんだろう?」と迷うこともありますよね。
対話で沈黙が訪れたら、少し深呼吸をしてみてください。
「この沈黙は、次の言葉をより豊かにするための時間かもしれない」と思えたら、
対話の幅はさらに広がるかもしれません。
① 相手が考える時間を尊重する
まず大切なのは「相手は今、考えている」と理解し、待つことです。
相手が言葉を探しているときに急かしてしまうと、対話を続けることが難しくなります。
待つときは、相手の表情や雰囲気をよく観察してみましょう。
もし考え込んでいる様子なら、無理に話をつなげるのではなく、
「ゆっくりでいいですよ」と声を掛けて待ってみましょう。
② 「今、どんなことを考えていますか?」と問いかけてみる
もし相手が沈黙したままになり、話しづらそうな雰囲気があれば、
やさしく問いかけるのもひとつの方法だと思います。
「今、どんなことを考えていましたか?」「もしよかったら、少しずつ話してみませんか?」
のように尋ねてみると、相手も気持ちを整理しやすくなるかもしれません。
ただし、「どうして黙ってるの?」と責めるような言い方になってしまうと、
逆に相手へプレッシャーを与えてしまうので注意しましょう。
③ 自分の考えを少し話してみる
相手が話しにくそうなときは、「私が感じたことを少し話してもいいですか?」
と断りを入れてから、自分の考えを共有するのもいいと思います。
例えば「私もこのテーマについて考えたときに、ちょっと迷ったことがありました」
というように経験から話し始めると、相手も「そういえば、自分もこう思っていた」と
考えを整理したり、まとめたりするきっかけになるかもしれません。
④ 沈黙を無理に埋めようとしない
沈黙があると、「何か話さなきゃ!」と焦ってしまうことはあるでしょう。
ただここで無理に話題をつなげようとすると、表面的な言葉のやりとりになってしまうことがあります。
対話はただ言葉を交わすことではなく、お互いに理解を深めるものです。
沈黙もまた対話の大切な一部だと考えてみてください。
必要以上に埋めようとしなくても大丈夫です。
【沈黙を味方につける対話を】
沈黙を「気まずいもの」と思うか、「大切な余白」と思うかで、対話の質は大きく変わると思います。
最初は難しく感じるかもしれませんが、意識していくことで、沈黙とうまく付き合えるようになってくると思います。
スタッフイノウエ