スタッフのひとりごと:対話のきく・はなす―応答について

■応答の力を知る ― 対話を深める小さな工夫

対話は、ただ言葉を交わすだけではありません。
相手の語りをどう受け止め、どう応答するかによって、対話の深さや広がりが変わっていきます。
「聴いたあと、どう応えるか」に焦点を当てていきましょう。

例えばあるテーマについて誰かが話したとき、その言葉にどう応じるか。
それが「応答」です。
話し手の言葉をそのまま聴き、他の人のさまざまな反応に触れることで、
私たちは「こんな聴き方があるのか」と視野を広げることができます。
それが、対話の学びの入り口だと思います。

 

■相手の言葉をそのまま受け取る

まず意識したいのが、「相手の言葉を自分の言葉にすり替えない」こと。
例えば話し手が「しんどい」と言ったときに、「疲れてるんだね」と言い換えてしまうと、
微妙にニュアンスが変わってしまうかもしれません。

話し手の使ったそのままの言葉で応答してみましょう。
「“しんどい”んですね」と返すだけで、相手は「ちゃんと伝わった」と感じ、
もっと話したくなるのです。

 

■応答は「聴いたことを受け止めているよ」というサイン

話されたことに対して、「それをちゃんと受け止めていますよ」と伝えるのが、
応答の基本です。
ただじっと黙って聴いているだけでは、相手は「伝わってるかな?」と不安になることもあります。

例えば「それを聞いて、○○だと感じました」と、自分の感じたことを言葉にしてみましょう。
相手が「ちゃんと聴いてくれてる」と実感できると、語りが深まっていくと思います。

 

■「受け止める」とは、相手の世界を想像すること

応答の鍵は、「話し手のリアルな現実を感じ取ること」にあります。
たとえ自分には理解しにくい体験でも、話し手にとっては大切なリアル。
表情、声のトーン、身振り手振り、沈黙――言葉になっていない部分にも耳を傾けてみてください。

「この人は今、どんな風景を見ていたんだろう」「どんな気持ちだったのだろう」
そんな風に、話し手の体験を「内側から」味わうように想像してみるのです。

 

■語りを広げる3つの応答

語りを深めていくためには、こんな3つの応答が挙げられます。

①受け止めたことを返す
 →「○○と感じたんですね」と、話し手の言葉や感情を確認する。

②話し手の世界を言葉にする
 →「その時、こんなふうに感じたのでは?」と、見えた情景や感情を言葉にする。

③問いかける
 →「そのとき、どんなことが頭に浮かびましたか?」と、自然に語りが広がる問いを投げかける。

このような応答は、話し手の「まだ言葉になっていない思い」を引き出すきっかけになっていきます。

 

対話の場は、「わかろうとすること」と「わかったつもりにならないこと」の間で揺れ動きます。
相手への敬意を忘れず、「今、自分はどう感じているか?」を確かめながら、
丁寧に応じていくことが大切です。

あなたの小さな応答が、誰かの語りをそっと支え、新たな気づきを生むかもしれません。
そんな応答の力を、ぜひこれからの対話で育ててみてください。

スタッフイノウエ